M&Aの手法(合併)

M&Aの手法(合併)

M&Aの手法の一つである合併は、法定の手続に従って、複数の組織が一つの組織になることです。日本法では、会社以外にも、相互会社や一般社団法人などさまざまな法人形態について合併の手続が法定されていて、また、信託についても「信託の併合」という合併類似の制度が法定されています。合併は、企業組織再編の手法の一つで、会社と会社とが結合する手法として、企業の再編や統合に比較的古くから用いられてきましたが、1998年に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律が改正され、純粋持株会社の設立が可能になった事により、株式移転などにより持株会社を設立し、持株会社の下に各企業を統合する手法も行われるようになっています。また、法域によっては法人格のない団体についても合併の手続が法定されています。商号(社名)については、知名度やブランド力の観点から商号(社名)としては事業規模の大きい企業の名称を用いることが多く、その他の人事などの実態的な企業としては一般的には事業規模がそのまま反映されることが多くあります。

合併の種類

合併を行う場合の方式の法的分類としては、吸収合併と新設合併の区別があります。実際の合併では、吸収合併によることがほとんどです。これは、新設合併は、株式上場企業の場合には改めて上場申請を要することや、銀行など許認可や事業免許を要する業種では、新設会社による許認可や免許の再取得が必要となるなど、事務手続きの処理が非常に煩雑となることが理由とされます。2003年の三越、名古屋三越、千葉三越、鹿児島三越及び福岡三越の合併(この合併により新たに三越が設立された)の際に新設合併を採用した事は、極めて珍しい例でした。銀行や航空会社で新設合併となった例は、政府の政策が主導となって合併したものであり(一県一行主義や、特定合併で設立されたなみはや銀行など)、銀行や航空会社が合併当事者間で新設合併を行うのは、免許の再取得における煩雑さもさることながら、免許取得が既存法人に対して行われかつその手続きに日数を要するため、物理的に不可能です。また、戦時統制下による近畿日本鉄道発足時においても新設合併が行われています。

新設合併:合併の当事者となる各会社を解散して、新たに設立する会社に全て承継させる方式をいいます(会社法2条28号)。例えば、新たに設立されたC社に、A社およびB社の権利義務を承継させることになります。

吸収合併:合併の当事者となる会社のうちの一つの会社を存続会社として残し、その余の会社の権利義務を存続会社に承継させて消滅させるものをいいます(会社法2条27号)。例えば、A社とB社が合併するケースで、A社がB社の権利義務を承継し、B社は消滅することになります。ここでいう存続とは法人格の存続のことです。但し、特例有限会社は会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)第37条の規定により吸収合併存続会社となることはできません。この為、特例有限会社同士の吸収合併も出来ません。

対等合併:合併比率1:1の合併のことで、これは、合併する企業の力関係(事業規模や知名度の大小関係)に関して述べたもので、併のスキームに関して述べたものではありません。合併のスキームは、会社法に規定された、吸収合併あるいは新設合併のいずれかの方式で行います。また、社会的慣用表現として、事業規模や知名度の大小関係に大きな差がある場合の吸収合併だけを「吸収合併」と呼ぶこともあります。この場合、吸収合併は、対等合併に対応する言葉として用いられていますが、これはあくまで社会的慣用表現です。実際の合併がほとんど吸収合併で行われていることからも、「吸収合併」の言葉を用いる場合には、注意を要します。

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逆さ合併

逆さ合併とは、合併の手法の一種で、事業規模が明らかに小さい会社を存続会社とする合併のことです。事実上の存続会社(実際には、法人格上の消滅会社)が非上場会社である場合、法人格上の存続会社が上場企業(かつての店頭公開企業を含む)である場合や、合併差損の回避や、繰越欠損金の控除の目的の為、存続会社の上場維持によって上場企業に昇格ができるといった利点が挙げられます。ただし、証券取引所が「企業の実質的存続性がない」と判断すれば(裏口上場)とみなされ上場廃止とされる事例もあります。

逆さ合併の例

みちのく銀行の相互銀行(第二地方銀行)と(第一)地方銀行(全国地方銀行協会加盟行)のケース、山形信用金庫の信用金庫と信用組合などのケースにみられるように、同業種他業態同士での合併においては、法律的な手続きが容易になる場合はこの合併形式が採用され、この場合は事実上の業態転換の要素も有します。

海外での逆さ合併

アメリカでは格安航空会社のバリュージェット航空が事故(バリュージェット航空592便墜落事故)によるイメージダウンから、同じく経営が悪化していた(旧)エアトラン航空を合併して(新)エアトラン航空と改名したケースがあります。

小売業関連の逆さ合併

近鉄百貨店は、2001年に規模は大きくはありますが、非上場であった旧近鉄百貨店が、小規模ながら上場会社であった京都近鉄百貨店(旧丸物)を存続会社として合併し、本店を旧近鉄百貨店の本店であった大阪市に移転の上、商号を(新)近鉄百貨店に改めたものです。株式上場の維持を理由として、京都近鉄百貨店を存続会社としたものの、実際には経営不振に陥っていた京都近鉄百貨店を旧近鉄百貨店が救済合併したものです。

労働者派遣業関連の逆さ合併

ランスタッドは、2006年に設立された初代日本法人が、2009年に本国での経営統合相手の在日法人であったヴェディオール・キャリアに吸収合併される形で、2代目日本法人のランスタッドが発足し、2011年には、フジスタッフに吸収される形で3代目日本法人に当たる現在のランスタッドとなっています。また、前身である旧フジスタッフも、1985年に前身企業が発足し、後にフジスタッフ(初代)となりましたが、2002年には、株式の店頭公開状態の維持(現在でいうところの、ジャスダック上場の維持)を理由に1980年にパソナ系列として設立されたプロフェシオに吸収される形でフジプロフェシオとなり、後に消滅法人の商号であったフジスタッフ(2代目)に改称しました。この2代目フジスタッフが法人格上、2011年から現在のランスタッドになっています。このため、現・ランスタッド日本法人の創業を1985年としています。2代目ランスタッド日本法人の前身であるヴェディオール・キャリアおよびプロフェシオの直接の前身であったパソナソフトバンクも逆さ合併を経験しています。日本法人としてのランスタッドおよびその直接の前身であるフジスタッフも、それぞれ、いわゆる逆さ合併を経験しています。

金融関連の逆さ合併

2009年5月にみずほ証券は、みずほFGでホールセール部門を手がける証券会社であった(旧)みずほ証券(法人格上、旧興銀系の流れを汲む)と旧興銀系でリテール部門では3大証券に准ずる規模を誇る新光証券の合併により誕生していますが、企業規模としては旧みずほ証券のほうが大きかったものの、上場維持を理由として旧新光証券を存続会社とし、消滅会社の商号が合併会社の社名となっています。このため、事実上逆さ合併となっていて、本社所在地や社長も、消滅側から起用されました。なお、上場維持を理由とした合併としては、現在のみずほ信託銀行の合併スキームに倣ったものです。企業規模を観点とした逆さ合併については、2013年以降を目処にみずほコーポレート銀行がみずほ銀行を吸収合併し、みずほ銀行に改称するケースがこれに続く予定です。都市銀行の「三井住友銀行」と第二地方銀行「わかしお銀行」の合併は、「わかしお銀行」が「三井住友銀行」を吸収合併し、商号(社名)を「三井住友銀行」に改める逆さ合併でした。なお、事業については、事業規模の大小関係がそのまま反映されることが多く、実際、この合併においても、三井住友銀行の一部署として、わかしお銀行の事業を引き継ぐ「コミュニティバンキング本部」(後に廃止)が設置されました。三井住友銀行の前身の一つである三井銀行も、1968年の東都銀行との合併時に逆さ合併を経験しています。

 

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