M&Aの防衛策

M&Aの防衛策

敵対的買収に応じるかは株主自身の判断になりますが、現実問題として一般株主が現経営と買収提案のどちらが優れているのかを判断するのは難しく、更にTOBともなれば数十日間の間での判断が必要になり、その事業の内容に精通していなければなかなか正確な判断を行うのは難しい状況です。現実に提案の良し悪しを判断できるのは、事業内容に精通している経営陣であり買収提案者とも言えます。しかしこの両者が対立するならば、両者の提案に対し株主が合理的な判断が行えるような十分な説明と判断材料そしてある程度の時間が必要になります。そこで、防衛策は買収が不意打ちのように進められてしまうことをいったんストップさせ、株主に対し合理的な判断が行えるための時間確保のために必要になるのです。買収防衛策は決して現経営者の保身のためのものではないのです。

会社経営のススメ

買収対抗策(買収防衛策)

マネジメント・バイアウト
MBOと略されます。経営陣が株式を取得して閉鎖会社としてしまうもので買収防衛策としては端的で究極的なもの。株式の上場とは第三者の自由な株式取得を認めることであることから、上場廃止にすることは経営者にとって望ましくない者が株式を取得することに真正面から対抗する方策となります。
パックマン・ディフェンス
逆買収ともいいます。敵対的買収を受けた企業が買収提案者を逆に買収することで、自社が買収提案者の現在の経営者のコントロール下に入ることを妨げようとすること。ゲーム(パックマン)において、追われる立場のメインキャラクターが一定条件下においてには逆に追手を食べて反撃することに由来しています。
第三者割当増資
いざというときの防衛策、予防策です。2005年3月のライブドアとニッポン放送での出来事で有名になったやり方で新規に株を発行する増資という方法を用います。それにより全体の発行済株式総数を上げ、買収する企業の持ち株割合を下げて買収されないようにするやり方で、通常の公募増資とは異なり、指定された第三者のみが新株を購入することができます。実質的な利益の供与につながる低価での発行は、他の株主が持つ株式の価値を希薄化し損害を与える可能性があり、投資家保護を主眼とする証券取引法違反の疑いが強いため乱用すべきではないといわれています。
ティンパラシュート
「ブリキの落下傘」の意味です。買収された後、人員整理などで従業員が解雇されることが多いことを利用した方法で従業員の退職金の額を非常に高く設定しておきます。それにより買収したとしても後の出費が多いということを見せつけて、買収を思いとどまらせるやり方です。
絶対的多数条項
買収した後、取締役解任などの特別決議の可決資本割合を80%や90%のように上げておき簡単に可決できないようにするやり方です。日本では定款変更により絶対的多数条項を削除できることから、定款の変更自体に絶対的多数条項を設けないと意味がありません。
ポイズンピル
毒薬条項とも呼ばれます。新株予約権を予め発行しておき、一定の条件が満たされると廉価でそれを行使可能にさせ、買収する側の持ち株比率を下げる仕組みです。アメリカでは新株予約権付株式を用いて行われます。日本では旧商法下では新株予約権付株式は認められていなかったので、信託型ライツプランが最も幅広く用いられていました。2006年5月1日施行の新会社法の下では取得請求権及び取得条項の取得対価として新株予約権をつける事が法律上可能となり、事実上の新株予約権付株式の発行が可能となったので今後の日本における買収防衛策に利用される可能性があります。ポイズンピルとライツプランは同義ではありませんが、日本ではほぼ互換的に用いられます。
スタッカードボード
期差選任取締役(会)の意味です。取締役の任期を全員2年ずつではなく半数ずつ改選されるようにして時間を稼ぐやり方です。このやり方は投資家からの批判が強く、使い勝手が悪いといえます。その理由として投資家が期差選任が取締役のモチベーションを下げる可能性を危惧しているからです。
ゴールデンパラシュート
「黄金の落下傘」の意味です。買収後、現在の取締役は解任されることが多いのですが、その取締役の退職慰労金の額を高額に設定しておきます。それにより買収後の出費が多いことから、買収を思いとどまらせるものです。退職慰労金の額の目安は取締役の年収の約2~3年分ぐらいですが、高額な場合には投資家からの批判が起こる場合もあります。買収を思いとどまらせるほどに高額な退職慰労金は背任になり、現実的には活用が困難だといえます。買収者側が現在に取締役に対して手切れ金として金銭を渡す事を容認し、買収を円滑に行わせしめる手法を言う事もあります。
事前警告型
買収がなされようとしたときには一定の防衛策を採る旨を予め警告しておくというもの。
全部取得条項付株式
会社法により少なくとも条文上は導入が可能となるもの。全部取得条項付株式は取得条項付株式の場合と異なり、取得の際に株主総会及び法定種類株主総会での取得決議を要すると言うデメリットを持つ代わりにその決議の際に取得対価を設定すればよいので、全部取得条項の設定の際に取得対価を設定する必要がないというメリットがあります。会社法になって導入されたもので、買収防衛にどのように用いられるかは未知数な所が多いです。レックス・ホールディングスのMBOにおいてこの手法が活用されました。
黄金株
重要な株主総会の決議事項について拒否権を有する株式を信頼できる第三者に対して発行することで、買収のために必要な決議を妨害するもの。会社法施行により導入が可能となり、東京証券取引所の上場企業などの公開企業でも株主総会の決議で無効にできることなどの一定の条件付きであれば導入が可能となっています。
労働組合との関係
労使関係が円満でいわゆる「アットホームな雰囲気」の企業体質を持つ企業では、被買収という事態に際して、労働組合の買収への反対や買収者への強い不安視という姿勢が、買収を難航させる防波堤としての役割を果たす場合があります。過去には、買収者である企業・経営陣の労務環境に対する姿勢への懸念から被買収側の企業の労働組合が買収に反対し、また買収成立の場合には状況次第で離職を考えるという従業員が多数を占めたアンケートのデータが意思表明として示され、その結果として買収が頓挫したケースもあります。
焦土作戦(クラウン・ジュエル)
スコーチド・アース・ディフェンスともいいます。会社の持っているクラウン・ジュエル(財産的価値の高い物)の関連会社への売却や、計画倒産などによって株価を暴落させることで買収するメリットを無くす方法です。但し、企業価値が下がれば、敵対買収者の関係のみならず会社債権者の債権の引当てとなる財産を毀損することにもなりかねないため、場合によっては企業の利益を追求すべき取締役が会社に対して意図的に損害を与える背任罪(5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)や、特別背任罪(10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金)に該当することもあります。
ジューイッシュ・デンティスト
情報工作・PR戦術を中心とする防衛策。買収を仕掛けてきた企業の社会的弱点をマスコミ等を用い広めることで、イメージダウンを図り社会的信用を貶め、買収工作資金を社会的信用度を回復するために回すことで買収をやめさせる工作。アラブ資本の会社が歯科器具メーカーを買収しようとした際に被買収企業側(アメリカの歯医者にはユダヤ人が多いとされています)が、広報戦略を行なったことに由来すると言われています。
ホワイトナイト
「白馬の騎士」の意味です。買収される企業にとって友好的な第三者(企業)のこと。自社株を買収してもらうことでキャスティング・ボートを握ることができます。発行済み株式総数の1/3を確保できれば拒否権を行使することも出来ます。買収する企業に逆買収をかける場合もあります。

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